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『ワーキングプア 日本を蝕む病』 ~NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班 ~ [「ドキュメンタリー系」]

何気なく手に取ったこの1冊、軽い気持ちでは読み切れません。
混沌とした何かが残る1冊です。
 
※とても長文になってしまいましたが、是非とも最後までお付き合いください!


ワーキングプア―日本を蝕む病








この作品は2006年7月23日に放送された、
 NHKスペシャル『ワーキングプア ~働いても働いても豊かになれない~』
と2006年12月10日に放送された、
 NHKスペシャル『ワーキングプア ~努力すれば抜け出せますか~』
の放送内容に加筆した作品です。

本の帯に読者の感想として・・・
 
 凄惨な現実に言葉を失った 
      - 37歳、男性、会社経営
 この本を読むまで、ワーキングプアは自己責任だと思ってました 
    - 50代、女性、主婦
 人ごとではないなと思いました 
    - 36歳、男性、会社員
 政策の基本的な事からやり直さなければ、この国は大変なことになると思う 
    - 69歳、男性、会社員



 私が読んだ感想も、まさしく、これらの意見と同じ気持ちです。
 ごく一部の、何の努力もしない、そんな人々がワーキングプアになっている訳では
 ないのです。誰でも、ちょっとしたきっかけで、ワーキングプアになってしまう、
 そんな危険性を含んだ、社会にいつのまにか、この日本はなっていたのですね~。



 本文は、下記のような構成になってます。

 1.「貧困」の闇が広がる日本
   全給与所得者の5分の1は年収200万以下
    「誠実に働き続ける人たちの叫び」
     (前略)
     ユキさんは重い病を患った母親と二人で暮らしていた。
     父親を早くに亡くし、自分の給料で家計を支え続けている「しっかり者」の女性だった。
     公立高校をトップクラスの成績で卒業したユキさんは、大手電機メーカーの製造工場に
     就職。初任給は二十万円を超え、高知県では破格ともいえる好待遇の会社だった。
     安定企業に就職することができたユキさんは、母親と暮らすための一軒家をローンで
     購入。正社員として定年まで働く覚悟だった。
     ところが2004年、ユキさんは突然思いもよらない辞令を受け取る。働いている工場が
     中国へ移転するため、国内の別の工場へ移るように、という内容だった。

     当時から国内の製造メーカーは、人件費の安い中国に相次いで進出していた。
     社会は、一家の大黒柱である、中高年のリストラ問題には注目しても、若者に
     ふりかかった悲劇には目を向けてこなかった。実際、中高年の自殺は目に見える形で
     深刻な社会問題になっていた。しかし、目に見えないところで広がっていたのは、
     若者層の賃金カットや年収三百万以下の、派遣・請負といった低所得者層の
     問題だった。多くの若者たちが派遣や請負、アルバイトといった不安定な
     雇用形態のまま低い賃金で働き、昇給の見込みもないまま年齢を重ねて
     いたのです。



     (後略)
     この後、ユキさんのその後と、現在に至るまでのいきさつが紹介されます。


 2.ホームレス化する若者
  急速に不安定化する若者の雇用
  15歳~34歳の非正規雇用者の割合 27.2%(2006年)

  ホームレス一歩手前の若者
  2003年に厚生労働省が行ったホームレスの全国調査によれば、東京都の
  ホームレスの数は6361人。東京都は2004年から、公園なとでテント生活を
  していた人をアパートや宿泊施設に収容する事業を始めた。その結果、都内の
  ホームレスの数は2007年2月時点で、4690人まで減少したと東京都は発表している。
  しかし、河川敷や公園などで、テントを張って定住生活をしている人はともかく、
  毎日各地を渡り歩く路上生活者の数を正確に把握するのは不可能だ。
  ホームレスが減少したとする発表とは裏腹に、各地の炊き出しには長蛇の列が
  できていた。先述した池袋で炊き出しに並ぶ人は、前年の1.5倍にのぼるという。 
 



     (後略)
     ~つまりは、ネットカフェ難民など、各地を渡り歩く路上生活者の数は
     正確に把握できてはいないのである。


 3.崩壊寸前の地方
  広がる都市と地方の所得格差
  1人当たり県民所得(2004年)
  東京都   4,560,000円
  東北6県  2,410,000円

  商店街最後の仕立て屋
  「都会は景気よくなったって言うけど、こっちは不景気だ。みんな古いのを直して着るんだ」
  仕立ての注文票を見せてもらうと、袖詰め500円、寸上げ1000円 ―小さな数字が並んでいる。
  「もう3月も終わるのによ~。正月から1万円も稼いでねえべ。よく暮らしているようなもんだ。
  まったくな。」注文票は2~3枚めくると、すぐ白紙になった。どうやら「お直し」の注文も
  減ってきたらしい。衣替えを待てば、直しは増えると言う鈴木さんに去年の年収を
  尋ねると20万円。これは厳しい数字だ。




 4.夢を奪われた女性
  女性給与所得者の4割が年収200万以下
  睡眠時間を4時間に削って働く母親
  (前略)   反町かおりさん(仮名)31歳。九年前に離婚。以来、二人の子供を抱えながら、
  たった一人で親子三人の暮らしを支えてきた。反町さんは、二つの仕事を
  掛け持ちしている。「昼の」仕事は、建設会社の事務。月曜日から金曜日の
  朝九時から夕方五時まで働く、いわゆる「フルタイムのパート」だ。
  日給は六千円。これだけでは生活できないため、子供たちを寝かしつけた深夜、
  もうひとつの仕事である弁当工場へ働きに出かける。




 5.グローバル化の波にさらわれる中小企業
  急増する外国人「労働力」
  研修の在留資格による新規外国人入国者数 92,837人(2006年)

   岐阜に押し寄せる中国人
   (前略)
   朝、岐阜市内では自転車に乗って職場に向かう中国人の姿が、
   あちらこちらで見られる。アパートなどに数人で共同生活をし、縫製や
   プレスの工場に通っているのだ。町には中国人のコミュニティができ、
   中国の食材などを売る専門店もいくつか登場している。
   こうした人々は、研修生や技能実習生という立場で日本に来ている
   研修生や実習生というのは、主に製造現場で、技術や知識を習得するため
   やってきた外国人のことで、発展途上国に対する日本の国際貢献
   として、1990年代に制度が整備された。

   時給200円の労働者たち
   急増する研修生や実習生は、どのような働き方をしているのか。
   2年前から中国人を使い始めたという縫製業者の井上正雄さん(仮名)
   を訪ねた。自宅にある作業場では、三人の実習生と、二人の研修生が
   働いていた。
   (中略)
   給料は月5万円、働く時間が日に八時間を超えた場合の「残業代」は
   時給200円でよいと言う。



 6.死ぬまで働かざるをえない老人
  年金をもらえない高齢者 約444,000人
   無年金の老夫婦
   2004年の国の推計によると、65歳以上の高齢者のうち、
   年金をまったく受け取れない可能性がある人は、全国におよそ
   40万人もいるとみられている。こうした高齢者のうち、安定した
   収入がなく、生活保護も受けていない人がどのくらいいるのかは、
   国も把握できていない。年金をまったく受け取れないため、
   年老いてもなお、働き続けなければならない高齢者を取材した。




 7.荒廃を背負う子供
  増え続ける児童養護施設の子供たち
  児童養護施設在所者数 30,830人(2005年)

   わずかな福祉予算
   「今の日本の福祉予算のうち、こうした子供たちに使われる予算は
   わずか。高齢者福祉にかける予算に比べても少ないのが現状です。
   日本の将来を担うのは子どもたちなのに・・・」

   ここにも深刻な環境に置かれた子供たちが入っていた。
   酒に溺れる父親に暴力をふるわれた中学生の男の子は
   自分から児童相談所に電話をかけて救いを求めた。
   母親はすでに家を出た、父と子の荒んだ家庭から逃れるために、
   学校で配られた紙に書かれた電話番号に救いを求めたのだった。

       ある母子家庭では、家計を支えるために働く母親が、疲れきって
   子供の世話ができず、子供は空腹のあまりコンビニで弁当を
   盗んだところを保護された。

   「現代の貧困は、金銭の貧しさだけではない。生活文化そのものが
   貧しくなり、家庭生活に深刻な影響を与えている。教育や日常必要な
   ものにお金を使うべきことをわかっていながらも、パチンコや競馬などの
   ギャンブルに使ってしまう。そして消費者金融から安易に金を借りて
   生活が行き詰まり、そのいらだちが子供たちに向かう。
   貧困は子どもたちに深刻な影響を与えています。」



 8.現実に向き合うとき



 かなり内容が濃い作品です。かといっていったい何が出来るのでしょうか?という悩みで、
 悶々としてしまいます。

 リストラ問題も、若い世代へ「君らはまだ若いから大丈夫」みたいな感じで、
 中高年より気軽な気持ちで解雇通知されてきていたのでしょう。

 地方都市と東京との格差、かといって、東京に行っても正社員として働き場所はない。
 地方都市では、アルバイトとしての働き口すらない、あったとしても、とても生活できる
 収入ではない。地方都市に関しては公共工事の削減も問題との記述もあります。

 家が貧乏であれば、子供も夢を見ることができない現実。さらに言えば、子供を育てる事すら
 できない状況。本文中の子供たちの夢は、普通の生活をしたい なのですよ!

 確かに政府は、再チャレンジに関する政策を展開していて、手に職をつけろとは言うが、
 手に職をつけるためには、お金もかかるし、時間も必要になってしまう。
 (本文の中では、再チャレンジに関しては、あくまでも期待している旨の記述ですが・・・)

 グローバル化の波に直撃された、繊維産業。
 法を犯して、外国からの留学生を安い賃金で雇わなければ会社としてなりたたない。
 真面目に、法を守っている経営者は、会社としてなりたたない現実。

 年金の無受給者の問題。本文では、空き缶を拾って生活している、老夫婦が照会されて
 いますが、今後40万人が年金無受給者と言う現実にどう立ち向かっていくのでしょうか?

 やはり1個人としては、打つ手が無いように思います。
 政治が問題だ!とか大企業が儲けすぎだ!と大きなものに怒りをぶつけて何か
 解決されるのでしょうか?
 今、政治では無駄をなくすと言う論調ですが、その無駄なお金でも人の生活が
 かかっている気がします。公共工事もやるべきではないでしょうか?
 
 以前中国で聞いた話によると、中国の公営の工場は廃止になると、その従業員は
 すべて警備会社に移籍になるそうです。
 その後、中国では法律を変更し、今まで社員100人以上の会社では
 警備員を1名雇用しなければ、ならなかった法律を、
 2名に増員して雇用を生んでいるそうです。
 (警備会社に関しては、国営のみが許可されているそうです。)
 実情は、ただ新聞を読んでいるだけの、警備員ばかりですがね・・・

 人材派遣会社に関しては、従業員の教育を義務付けるとか、人材派遣会社内で、
 独自の資格制度を開発し、出来るだけ有利な条件での派遣できるように工夫するなど・・・
 実際タクシー会社は、2種免許取得の費用は負担してますよね~。そんな感じで、
 人材派遣会社内で資格を作り、肉体労働でも体力2級とか、事務作業3級とか、
 派遣を何人ひとまとめではなく、その人を見て派遣出来るようにする工夫くらいは、
 可能なのではないでしょうか?

 いずれにしても、他人へのお願いになっている気がします。
 自分自身何か出来ないのか、真剣に考えたいと思います。

 それでは、最後までお付き合いくださいありがとうございます。


 
 
  
 
   


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