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『心に響く小さな5つの物語』 ~藤尾秀昭~ [藤尾秀昭]


 20万人が涙した感動実話

 私もこの物語を読み 涙が止まりませんでした - 片岡鶴太郎


心に響く小さな5つの物語

心に響く小さな5つの物語

  • 作者: 藤尾 秀昭
  • 出版社/メーカー: 致知出版社
  • 発売日: 2010/01
  • メディア: 単行本



<著者のプロフィール>
 藤尾秀昭(ふじお ひであき)
 昭和53年の創刊以来、月刊誌『致知』の編集に携わる。
 54年に編集長に就任。平成4年に致知出版社代表取締役社長に就任。
 現在代表取締役兼編集長。
 主な著書に『現代の覚者たち』『小さな人生論1~4』
 『WEB版小さな人生論ノート』『小さな経営者論』がある。

 片岡鶴太郎(かたおか つるたろう)
 高校卒業後、片岡鶴八師匠に弟子入り。
 3年後に声帯模写の芸人として独立し、バラエティー番組を足がかりとして人気を博す。
 現在はドラマ、映画などさまざまな分野で活躍中。
 画家としても、平成7年に初の個展『とんぼのように』を開催して以来、
 毎年全国で個展を開催。


<この本との出会い>
 致知出版のHomePageで知りました。

 
<本の構成>
 第一話 夢を実現する
 第二話 喜怒哀楽の人間学
 第三話 人の心に光を灯す
 第四話 人生のテーマ
 第五話 縁を生かす
 あとがき

 ページ数 77ページ
 読書時間 1時間

 


<本文からのご紹介>

 第二話 喜怒哀楽の人間学
 少年は両親の愛情をいっぱいに受けて育てられた。
 殊に母親の溺愛は
 近所の物笑いの種になるほどだった。

 その母親が姿を消した。
 庭に造られた粗末な離れ。
 そこに籠ったのである。
 結核を病んだのだった。

 近寄るなと周りは注意したが、
 母恋しさに少年は
 離れに近寄らずにはいられなかった。
 しかし、母親は一変していた。

 少年を見ると、ありったけの罵声を浴びせた。
 コップ、お盆、手鏡と手当たり次第に投げつける。

 青ざめた顔。
 長く乱れた髪。
 荒れ狂う姿は鬼だった。

 少年は次第に母を憎悪するようになった。
 哀しみに彩られた憎悪だった。

 少年6歳の誕生日に母は逝った。

 「お母さんにお花を」

 と勧める家政婦のオバサンに、
 少年は全身で逆らい、
 決して柩の中を見ようとはしなかった。

 父は再婚した。
 少年は新しい母に愛されようとした。
 だが、だめだった。
 父と義母の間に子どもが生まれ。
 少年はのけ者になる。

 少年が九歳びなって程なく、父が亡くなった。
 やはり結核だった。

 その頃から少年の家出が始まる。
 公園やお寺が寝場所だった。
 公衆電話のボックスで
 体を二つ折りにして寝たこともある。
 そのたびに警察に保護された。

 何度目かの家での時、
 義母は父が残したものを処分し、家をたたんで蒸発した。
 それからの少年は施設を転々とするようになる。

 十三歳の時だった。
 少年は知多半島の少年院にいた。
 もういっぱしの「札付き」だった。

 ある日、少年に奇跡の面会者が現れた。
 泣いて少年に柩の中の母を見せようとした
 あの家政婦のオバサンだった。

 オバサンはなぜ母が鬼になったのかを話した。
 死の床で母はオバサンに言ったのだ。

 「私は間もなく死にます。
  あの子は母親を失うのです。
  幼い子が母と別れて悲しむのは、
  優しく愛された記憶があるからです。
  憎らしい母なら死んでも悲しまないでしょう。
  あの子が新しいお母さんに可愛がってもらうためには、
  死んだ母親なんか憎まれておいたほうがいいのです。
  そのほうがあの子は幸せになれるのです。」

 少年は話を聞いて呆然とした。
 自分はこんなに愛されていたのか。
 涙がとめどなくこぼれ落ちた。
 札付きが立ち直ったのはそれからである。

 作家・西村滋さんの少年期の話である。

 喜怒哀楽に満ちているのが人生である。
 喜怒哀楽に彩られたことが次々に起こるのが人生である。
 だが、その表面だけを掬い取り、
 手放しえ受け止めてはなるまい。
 喜怒哀楽の向こうにあるものに思いを馳せつつ、
 人生を歩みたいものである。
 その時、人生は一層の深みを増すだろう。
 われわれが人間学を学ぶ所以もそこにある。
   

 『心に響く小さな5つの物語』P18~P30




 この本は、月刊誌『致知』に掲載された中から抜粋された5つの心に響く作品を、
 片岡鶴太郎さんの挿絵を含めて構成されてます。鶴太郎さんの挿絵とその文字が
 また素晴らしいですね。わずか77ページですのであっと言う間に読むことが出来ます。
 でも、じっくりと何度も読み直したくなる本ですね。
 基本的には『小さな人生論』にも記述されている内容なのですが、それらの中から
 選りすぐり、1冊の本として集めることで、感動は増します。
 まずは、この『心に響く小さな5つの物語』を読んで、致知の世界に触れ、
 その後、『小さな人生論』を読んでみるのも良いのかもしれません。
 でも、本文から紹介した西村さんに、母親の真相を伝えた、家政婦のオバサンが
 もしいなかったとしたらいったいどうなっていたんでしょうね…
 絶妙のタイミングで伝えられ、立ち直るきっかけになるのも運命なのかもしれませんね。





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