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『そうだ、葉っぱを売ろう!』 ~横石知二~ [「ドキュメンタリー系」]

横石知二さんは現代の二宮尊徳だと思う。
重要なのは「町興し」「村興し」ではなく、その土地に生きる一人一人が目標と生きがいを持てるかどうかだと、見事に証明して見せた。 -村上龍-


そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

  • 作者: 横石 知二
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2007/08/23
  • メディア: ハードカバー



<著者のご紹介>

 横石知二(よこいし ともじ)
 1958年徳島市生まれ。
 79年徳島県農業大学園芸学科卒業後、上勝町農協に営農指導員として入社。
 86年つまもの商品「彩」を開発、販売、91年特産品開発室長。
 96年上勝町役場産業課に転籍し、99年第三セクター「株式会社いろどり」取締役。
 2005年同社代表取締役副社長。
 02年アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー日本特別賞受賞、03年日本ソフト化大賞受賞、
 07年地域活性化担当大臣から「地域中小企業サポーター」に、内閣官房および経済産業省から
 「地域産業おこしに燃える人」に、ニューズウィーク日本版「世界を変える社会企業家100人」に
 選ばれる。


<この本との出会い>

 テレビで上勝町の葉っぱビジネスの事を知り、興味津々でこの本を購入してみました。




<本文からご紹介>

 打ちひしがれた町

 上勝町に来た当初は、とにかく地理も人も、まったく分からなかった。そこでまずは、農家を一軒一軒あいさつに回ることから始めた。
 最初の1、2年は仕事というよりも、町の地理や住んでいる人の顔を名前、それぞれが何を栽培しているかなどを覚え、自分のことを知ってもらう勉強の期間えあった。
 上勝の人口流出がすごかったこのころは、10代の若者は進学や就職で、みんな当たり前のように町から出て行った。働き盛りの世代でも、経済的に有利な、体力的にも楽で便利な暮らしを求めて、町を離れる人が増えていた。
 出て行かない人たちには、取り残されたような感覚も生まれ、町全体に暗く沈んだ空気が漂っていたような印象がある。

 上勝に来てからまず一番に驚いたのは、山や田畑で働く60代から70代ぐらいの男衆の何人かが、朝っぱらから一升瓶を提げて農協や役場に集まり、酒を呑んで、くだを巻いていることだった。本当によく来ていた。一体どうしてそんなに朝からずっと座りこんで、酒を飲んでいるのか。
 雨が降っている日には特に多かった。そりゃもうがんがん呑んで、補助金がいくらだの、国が悪い、役場が悪いだのといった愚痴を、えんえんしゃべり続けていた。
 「どうしてみんな、自分の生まれた町のことを、こんなにも悪く言うんだろう」
 「なんでもっと、自分たちが住む町を、いいように考えんのだろう」
 不可解に思って理由を探ってみた。すると、当時は町の主な産業がミカン、林業、建設業などで、高齢者には出番が少ない。しかも雨が降るとどの仕事も作業にならない。それで、することがなくて、役場や農協に集まって酒を呑んでいたことが分かった。

 ~ 中略 ~ 

 女の人はもっと状況が悪く、自分で定期的に収入を稼げるような仕事はほとんど持っていなかった。
 いまと比べて30年近く前は、日本の社会全体としても、女性の地位がまだまだ低かった時代である。男女の賃金格差は当たり前。女性は学校を出て就職しても”腰掛け”と見られて、結婚が決まれば寿退職。そして、家で専業主婦をするのが普通だった。
 上勝の女の人たちも「てご」といって、人の田畑や山の作業を手伝って手間賃をもらうぐらいがせいぜいだった。
 仕事はない、カネはない、でもひまはある女性たちは、嫁や誰かの悪口をずっと、大げさでなく朝から晩まで話していた。
 ある日、私が農業指導で町内を回っていたときのこと。朝、ある家の前を通りかかると、縁側で嫁の悪口を言い合っている人たちがいた。それがお昼を過ぎてから同じところを通りかかると、まだ同じようにしゃべってる。
 「何をそんなに、しゃべっとんな」
 嫌で嫌で、たまらなかった。
 「なんで、そんなに人の悪口を言うんかなあ」
 ひまであることが、いかにいけないか。ひまが続くことが、人間にとってこんなにも悪く作用するのかということを、そのときにものすごく感じた。
 人は誰でも、朝起きたときに、「今日はあれをせないかん、これもせないかん」と、することがないといけない。忙しいということは、やっぱり大事なことなのだ。





 上勝町の葉っぱビジネスは、いろいろなテレビで紹介されているので、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか? 本文から紹介した通り、横石さんが赴任した当初は、こんな状態だったそうです。
 その後、台風によるミカン畑の大災害を経験し、ミカン中心の農業から短期で収穫可能な野菜の栽培も取り入れ、そしてその後のある出会いにより葉っぱビジネスを立ち上げたのです。もちろん、いきなり軌道に乗った訳ではなく、試行錯誤しながら現在のような状況になったのです。
 葉っぱビジネスは、こんなおばあちゃん達でも出来る体力のいらない仕事なので、毎日愚痴を言っていたおばあちゃん達の変わりようはすごいものです。最初は疑心暗鬼な人たちも、今ではパソコンまで使いこなし、活力あふれた生活を送っているのがこの本から伝わってきます。
 以前テレビでみた、保育園の新しい取組として、おばあちゃん達との交流を行っている保育園があるとの紹介がありました。高齢化社会の取り組みとして、素敵なことだな~と思っておりましたが、その時はボランティア扱いでした。上勝町のように、おばあちゃん達にでも出来る、やりがいがある仕事をしてもらえると、よりいっそう社会は活性化していくのではないかと思いますよね~。 ちなみに上勝町のおばあちゃん達は、葉っぱビジネスにより忙しく、そして健康になり、「今日は忙しいから病院には行けない」なんて言っているそうです。医療費の抑制にも一役かっているのですね~。こんな素敵な町や取り組みが日本全国のあちこちで起これば、きっと将来素敵な日本になることでしょう。ん~私も何か考えて見ますね。そして何かやりたいですね。

※いつも読んで頂いてありがとうございます。 
 もしお勧めの本がございましたら、カテゴリー★お勧め本一覧★にコメントして下さい。






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